会長ごあいさつ

1973年に“動物の保護及び管理に関する法律”が制定されましたが、1999年には“動物の愛護及び管理に関する法律”と改正(第一次法改正)され、ブリーダー等動物取扱業者は届出制となり、地方自治体に届ければ、“業”としての継続が認められました。しかし、2005年の第二次法改正では届出制から登録制に変わり、動物取扱責任者の選任義務等が強化され、更に2012年には第三次法改正が行われ、犬猫等の健康安全計画の提出遵守義務等の規制が追加されました。

一方、西欧の先進諸国の法制度の歴史に目を転じますと、1822年世界で最初にイギリスで「畜獣の虐待及び不当な取り扱いを防止する法律」が制定され、その後フランス(1850年)、ドイツ(1871年)、スイス(1893年)と1800年代に動物保護に関する基本的な法律が成立する等、拙速とも思える日本の法律改正と比較すればはるかに長い歴史を経て、現在の動物愛護の気風が定着してきたといえるでしょう。

また、我が国においては、数次の法改正により、各種の規制が強化され、ペット関連業界は様々な影響を受け極めて厳しい状況に直面しています。中でも犬のブリーダー数の激減は子犬の生産頭数の減少と価格の高騰を招き、健全な子犬を手の届く価格で入手したいとする一般国民の要望に応ずることが困難な事態を招くに至っています。更に2018年には、第四次法改正が行われることとなっていますが、動物愛護団体の一部からは、法改正の目玉として飼養施設に関する数値基準の導入を求める声も大きくなっています。

この様な状況の下で、ペット関連業界が一丸となって共通の課題を克服すべく2016年3月に「犬猫適正飼養推進協議会」を設立したところであります。協議会の活動として当面の最重要課題であるブリーダー(特にホビーブリーダーといわれる小規模でかつ営利を目的としていないもの)数の激減に関しては、動物愛護論研究会編「改正動物愛護管理法Q&A」(大成出版社、2006年刊)において、「例:年間二回以上又は二頭以上」であれば法で定める“業”の登録が必要とされている慣行を改善するための活動を展開しています。(2015年欧州委員会の報告によると、EU12ヶ国の子犬の87%がホビーブリーダーによって繁殖されている)

即ち、先進西欧諸国の繁殖規制を参考にして、「年間3胎」以下の繁殖しか行なわないブリーダーは“業”の登録が不要であると改善すべき旨を掲げ、環境省及び有力な国会議員への陳情活動を行なっています。

他方、飼養施設の基準の導入に関しては、先進各国の事例を調査した結果、イギリスの制度と同様の方式を新たに確立することが望ましいとの結論に達しました。即ち、犬猫飼養施設と飼養環境に関する望ましい基準を「適正飼養ガイドライン」として策定し、当面はブリーダー及びペットショップに適用するものを完成することとしています。なお、このガイドラインを策定するに当り、イギリスの基準を参考にしたほか、現行の動愛法に定められた適正飼養に関する規制も可能な限り取り入れています。

この度犬猫適正飼養ガイドラインが完成したのを期に、「適正飼養ガイドライン」ウェブサイトを開設しました。今後猫適正飼養ガイドライン、管理手順書、管理台帳、使用した文献や資料等も順次記載してまいります。「適正飼養ガイドライン」が日本で飼養されている犬や猫が健康で幸せな生涯を送る一助となり、人と動物の共生する社会が実現するよう切に願う次第です。

末筆ながら、ほぼ2年間週末に多くの時間を割き、作成作業に御協力頂きました「犬猫適正飼養ガイドライン」作成ワーキングチームの皆様、又多くの貴重なご意見を頂いた監督官庁並びに学識経験者の方々、又マーケットリサーチ、資料収集並びに海外資料の翻訳等の為の資金援助をして下さったペット産業関連団体の皆様に、当協議会を代表し、心から御礼申し上げます。

2018年6月

犬猫適正飼養推進協議会 会長

石山 恒